アンヌ・フォンテーヌ / 美しい絵の崩壊

 ガス・ヴァン・サントの『追憶の森』はマシュー・マコノヒー演じるアーサーという男が、自殺するために青木ヶ原樹海を訪れるところから始まる物語だが、アーサーの嫁はナオミ・ワッツだと知った瞬間に「おいおいナオミ・ワッツと結婚しておいて自殺だと?」という疑念が沸き起こり、観るのを止めたのであった(まあそれは嘘で、実際はあまりに退屈なので最後まで観られなかっただけである)。

 原作はドリス・レッシングの『グランド・マザーズ』だそうだが、読んでいない。

 幼少の頃から親友であるロズ(ロビン・ライト)とリル(ナオミ・ワッツ)が、お互いの息子と一線を越えて関係してしまうところから物語は始まる。

 お互いの息子と関係を持つのに倫理的な躊躇がほとんどなく、あまりにもサラッと進んでいく上に性的な描写も控えめなので、この映画が背徳感や官能的な物語ではなく、なにか神話的な関係性を描いているのであろうことはなんとなくわかる。オーストラリアの美しい海辺の街で育ち(この辺の映像はとても美しい)、ともすれば同性愛と勘違いされるほどの親友同士であるロズとリル。そのお互いの息子と性的に結ばれ、一時は楽園のような関係性を築くに至るものの、自己完結した楽園(=美しい絵)は永遠に続くことはなく、やがてそれが崩壊してしまう。その過程を描いた映画なのだろう(でもこれ、最終的にその楽園は"崩壊"してないように思えるのだが……)。

 とはいえまあ基本的にはどうでもいい話で、正直に言えば自分がこの映画から何を感じ取ればいいのかさっぱりわからなかったというのが本音だった。

 ナオミ・ワッツ目的の下世話な関心だけで観たわけだが、イアン役の尻をアップで撮るあたりを鑑みるに、普通に女性向けの映画で、そういう下種な欲望を満たせる映画ではなかった(というか、ほとんど期待もしていなかったけど)。女性はもしかしたら好きなのかもしれない。

(2013年 トランスフォーマー ★★☆☆☆)