佐々木敦 / 「4分33秒」論——「音楽」とは何か

 佐々木敦という方はアカデミズムに対する恋慕とかコンプレックスを隠さず、現代音楽とかコンセプチュアル・アートのような分野を題材にしてツギハギのパッチワークでそれっぽいことを書く腕利きの音楽ライターという印象で、この本も概ねそんなような内容だった。「4分33秒」という内容のポピュラーさと、口頭での講義の書き起こしということもあって知識がなくても読みやすく、一冊の本まで引き延ばされたライナーノーツを読んでいるような感じでサラッと読めた。

 現代音楽論というのは完全によくわからない分野なので特に書くべきことはないが、既存の文献からの引用がかなり多く、著者のロジックそのままのものも(本人も「真似だとよく言われる」と中に書いている)あったりして、オリジナリティ薄いなあと思わされる部分もないではなかったし、この解釈は「4分33秒」論においてどれくらいスタンダードなのか、というのもよくわからないので、ただただ知的な欲望を満たすだけで終わってしまったなという感はあるが、単純に面白い本だった。

 (2014年 Pヴァイン ★★★★☆)