メニー・リンデンフェルド / オクルターツム

 たまにはマジック商品について。

 もう発売からずいぶん経っており、やや旧聞に属する話になるので恐縮だが、最近になってようやくメニー・リンデンフェルド氏の『オクルターツム』を買ってみた。

 結論から申し上げれば大変賢い原理だった。マジック商品を買っていると何年かに一度くらいは思わず声の出てしまうような巧妙なアイデアに出くわすのだが、これはそういう商品の一つだ。

 この現象で古典の改案というとあれしかないなという感じではあり、まあ買ってみて実際そうだったのだが、これの素晴らしいところはそのクラシカルな方法論では「こうしなければならなかった」という欠点がほぼ完璧に近い形で改善されている点だ。メンタルマジックにおけるニュー・クラシックとはこういうものではないかと思わされたし、同様のエフェクトにおけるピュアな解決法はこれが限界なのではないだろうか。

 既にさまざまなところでレビューされている通り、アイデア料だと考えても少し高い、という評価はわからないでもないのだが、あるアイデアを思いつき、それをここまで拡張してレクチャーしてもらえるという点を考えれば価格はそう高いとは思えなかった。これは「ギミック」ではなく「原理」であって、知っていればいつでもどこでも可能なのだ。新たなアイデアへの応用性への高さもある。

 また、マジック商品において「サイコロジカル」というのは広告的な表現でよく使われるが、これは本当にサイコロジカルな原理を使っている。こういうものを観たのはMax Mavenの『ビデオ・マインド』以来だ。ここ最近で購入したマジック商品ではダントツに蒙を啓かれたものの一つだった。

(Murphysmagic 2018年 ★★★★★)