スパイラル:ソウ オールリセット / ダーレン・リン・バウズマン

無職でヒマだったので観た。 叙述トリックを使った作品を紹介するときに「この作品は叙述トリックだ」と言ってしまうと既にネタバレを喰らうのと同様に、ソウシリーズを観るときには「ドンデン返しのプロットを作ろうとしている」というのが明らかなので、い…

ホムンクルス / 清水崇

僕は基本的に漫画というものをほとんど持っていないが、この山本英夫の『ホムンクルス』だけは所有していて、引っ越しの際にもほとんど迷わず持って行くことにしているくらい好きな漫画だったりする。 そんなわけでこの漫画が実写化されたとネットで知ったと…

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| / 庵野秀明

個人的な感想を書く。 もっと投げっ放しで終わると思っていたのだがちゃんと終わっていた。成熟を拒否しつづけてきた碇シンジが既に大人としての生活を営むトウジやケンスケに助けられながら「他者を救う」ことを自ら選び取り、ゲンドウやアスカを救済するこ…

ジグソウ:ソウ・レガシー / ザ・スピエリッグ・ブラザーズ

Netflixで観た。 このシリーズ、3以降はぜんぜん面白くねえなと思いながら一抹の期待と義務感と惰性で観ているため、ほとんど内容を覚えておらずファイナルに至ってはもう観たかどうかすら記憶が曖昧なくらいで、まあいいかと思い見始めたのだが、これは結構…

メニー・リンデンフェルド / オクルターツム

たまにはマジック商品について。 もう発売からずいぶん経っており、やや旧聞に属する話になるので恐縮だが、最近になってようやくメニー・リンデンフェルド氏の『オクルターツム』を買ってみた。 結論から申し上げれば大変賢い原理だった。マジック商品を買…

ジョン・クラシンスキー / クワイエット・プレイス

年始であまりに暇だったのでレンタルしてきて観た。 以前Netflixで『バード・ボックス』を観ていたこともあって姿を現さない"何か"に襲われるのだと勝手に思い込んでいたのだが、始まってすぐにエイリアンのような生物が出てきて「えっ」と声が出てしまった…

伴名練 / なめらかな世界と、その敵

書店で装丁を見てたぶん面白いんだろうなと思って買ってみたが、やはり面白かった。こんなこと言いたくないのだがかつて大学の頃に夢中になって読んだ伊藤計劃と読後感がほとんど同じで、なんだかとても懐かしい気持ちになった。具体的に何が似ているのかと…

糸巻き

僕は糸を巻きつづけていた。 なんのために糸を巻いているのか、そもそもこれがなんの糸なのかも僕は知らない。いつから巻いているのか、いつまで巻けばいいのかも僕にはわからなかった。 それでも僕にはこの糸を巻くしかないようだった。糸を巻くのをやめて…

江戸川乱歩 / 江戸川乱歩名作選

江戸川乱歩の本を読んだのはせいぜい『江戸川乱歩傑作選』を中学生の頃に読んで面白いなあなどと興味を持ちつつ何冊か適当につまみ食いした程度で、あとは丸尾末広や人間椅子や映画(若松孝二の『芋虫』)を通して触れていたくらいしかないのだが、なんとな…

アダム・ウィンガード / サプライズ

Netflixでマイリストしてあったのでなんとなく観た。個人的にはなかなかお気に入りの映画。 『13日の金曜日』シリーズでもっとも好きな作品が『13日の金曜日 PART 7 / 新しい恐怖』で、これはファイナル・ガールである超能力少女にジェイソンが手も足も出ず…

タネリ・ムストネン / サマー・ヴェンデッタ

暇つぶしに借りてきて観た。ネットのレビューはかなり酷評に近いものが多いが、そうした評価を下したくなる気持ちはわからないでもない。 二転三転する展開は観客の予想を裏切ってやろうという意図が明らかで(にも関わらずトレイラーの段階でネタバレしてし…

鏡リュウジ / 占星術の文化誌

現代の枠組みにおいて「オカルト」として退けられがちな占星術は、中世以前では一つの学問あるいは教養として科学と分かちがたく結びついていた。文学・美術・音楽・医術・心理学という諸分野において、それがどのような影響を与えてきたのかということにつ…

岩井洋 / 記憶術のススメ 近代日本と立身出世

明治二十年代ごろ、催眠術・心霊術・記憶術を始めとする<術>ブームがあった。それは資本主義が輸入され、日本が急速に近代化していく過程において、人々がより経済的な価値観を重視し、時間を細かく断裁することで効率的な時間配分を獲得しようとする思考…

ジョゼフ・デスアール, アニク・デスアール / 透視術——予言と占いの歴史

奇術の演出論的な興味から読んだ。あとがきによれば著者のジョゼフ・デスアールはそもそもが本業の"透視術師"なので、その実践に基づいたオカルト的な(あるいは超心理学的な)語彙で溢れてはいるものの、透視術(占いも含む)のカテゴリーや実際の事例など…

大塚英志 / 殺生と戦争の民俗学 柳田國男と千葉徳爾

図書館でパラパラとめくりながら「殺生の快楽」という物騒な見出しが目に飛び込んできて、大塚英志にこの手の話を書かせたら面白いに決まってるよなと思いながら手に取った本。 柳田國男の弟子たちの中でも最も「部外者」に近かった千葉徳爾(本書によれば大…

ロベルト・ジョビー / カード・カレッジ・ライター

ロベルト・ジョビーの『カード・カレッジ・ライター』の完訳。こうした本を翻訳、出版してくれる方々は本当に尊いと思う。僕らのようなアマチュア・マジシャンはいくらギャランティやチップを稼いでいようが、結局やっているのは他人の真似事ばかりで、偉そ…

A・A・ミルン / クマのプーさん、プー横町にたった家

先日『プーと大人になった僕』を観に行ったのだが、ミルンの原作もまったく読んだことがないし、ディズニーのアニメすら全く知らなかったので、ウサギやらカンガルーやらフクロウやら未知のキャラクターが登場してきて「なんじゃこりゃ」状態で、それでも面…

マーク・ダグラス / ゾーン 相場心理学入門

僕自身はトレーダーではないし、それに類する投資も全くやらない。もしかするとこの先いつか手を出すこともあるかのかもしれないが、今のところその予定はない。にも関わらずこの本を読んだのは、単純な知的興味からである。 ほとんど知識がなくファンダメン…

セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ / 誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

めちゃくちゃな希死念慮に襲われるたびにGoogleの検索ボックスに「死にたい」と意味もなく打ち込み、検索結果のページを眺めては溜息をつくということを繰り返していたことがあるのだが、ある時期を境にして検索結果に「こころの健康相談統一ダイヤル」なる…

デイヴィド・クレイグ / コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る

僕にはブックオフのビジネス書コーナーという地球上で最も意識の低いであろう場所で本を買いまくる悪癖のようなものがあり、そこでたまたま手に取った一冊。コンサルタントとして華麗なる経歴を持つ筆者が、虚業としてのコンサルタントの内幕や、その手口に…

ランベルト・バーヴァ / ザ・トーチャー 拷問人

僕が大学生くらいの頃にホラー秘宝というキングレコードのホラー映画専門レーベルがあって(まだあるっぽい)、古いカルト映画や低予算ホラー映画を定期的にリリースしていたのだが、その頃に観ようと思いつつ放置した一本。 口から猿轡を吐きだし磔にされた…

ミラン・トドロヴィッチ / ゾーン・オブ・ザ・デッド

もう10年くらい前のゾンビ映画で、大学生くらいの頃に観ようと思ってずっと放置していた。何故かゲオで見かけて急に観ようという気になって借りてきた。 さすがにもう古めの低予算映画なのでテンポが悪く、エンジンがかかるまで30分くらい掛かることは確かな…

高木重朗 / カードマジック事典

マジック愛好家の間ではその名を知らない人はいないくらいの名著で、カードマジックを学ぶならこの本をまず買えとアドバイスされることも多いのだが、ネットで「カードマジック事典 おすすめ」と検索をかけてみても名作以外の有用な情報が出てこないあたり、…

ジョー・チエン / ゾンビ・ファイト・クラブ

いやあ。てんでダメな映画というわけじゃないんですよ。わりとアクションとか戦闘シーンは頑張っているんですよね。女優もみんな美女揃いだし。 狭いマンション内(?)でゾンビをボッコボッコ素手で殴り倒していく(ゾンビこれだけ殴り殺すのは珍しいのでは…

中田考 / みんなちがって、みんなダメ

書店で刺激的なタイトルに惹かれて面白そうだなと思い手に取った本。ところどころで蒙を啓かれる部分も多かったが、読み終えてみてあんまり愉快な本ではなかったことは確か。 たとえば社会そのものに満遍なく西洋近代思想のイデオロギーが浸透しており、それ…

クリストファー・ランドン / ゾンビーワールドへようこそ

ビール飲みながらなんとなく観ていたが、けっこう面白い映画だった。ゾンビ×コメディ×青春(しかも童貞)というあまりにもベタベタで手垢がつきすぎてもう黄ばんでるぜそれ、みたいな内容ではあったが、くだらないジョークの連発でゲラゲラ笑いながら気分よ…

佐々木敦 / 「4分33秒」論——「音楽」とは何か

佐々木敦という方はアカデミズムに対する恋慕とかコンプレックスを隠さず、現代音楽とかコンセプチュアル・アートのような分野を題材にしてツギハギのパッチワークでそれっぽいことを書く腕利きの音楽ライターという印象で、この本も概ねそんなような内容だ…

サリー・ボンジャース / わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと

この種のスピリチュアル本はほとんどの場合、覚者(グル)が覚醒までのプロセスやメソッドを提示する、というのが基本的なパターンなのだが、この本はそうしたいわゆるカリスマ的なグルではなく、むしろグルに指導されている側の、市井の人々が何らかのきっ…

春日太一 / 時代劇はなぜ滅びるのか

図書館で借りて読んだ。申し訳ないがこれはちょっと買わなくてよかった。 時代劇の変遷をデータで分析・考察していく一章、二章は納得しながら面白く読んでいた。視聴者層を高齢者向けに絞り、若年層を切り捨てた結果が現在の時代劇の没落につながっていると…

ふろむだ / 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

この著者のことはいっさい知らないのだが、たまたまネットで見かけて面白そうだなと思い買って読んだ。Amazonの入荷予定がけっこう先で、まあ書店に行けばあるだろ、くらいの気軽な気持ちで探しに行ったら驚くほど品薄で、数件ハシゴしてようやく見つけた。 …