江戸川乱歩 / 江戸川乱歩名作選

 江戸川乱歩の本を読んだのはせいぜい『江戸川乱歩傑作選』を中学生の頃に読んで面白いなあなどと興味を持ちつつ何冊か適当につまみ食いした程度で、あとは丸尾末広人間椅子や映画(若松孝二の『芋虫』)を通して触れていたくらいしかないのだが、なんとなく書店で新潮文庫のコーナーを見ていたらこれを見つけて「こんなのあったか?」と思いながら買って読み始めたらやはり面白かった。比較的最近(といっても数年前になるが)編まれたもののようで、通りで書店で見かけた記憶がないと思っていた。そもそも江戸川乱歩など探してはいないから目につかなかったのだろうが。

 ファンではないので大して知りもしないのだが、タイトルを聞いたことのある名作ばかりが収録されており、そもそもこの種のミステリ的な作品を読むこと自体がまったくないのもあって古い作品ではあるが新鮮味のある読書だった。

 個人的に好きなのは『押絵と旅する男』と『人でなしの恋』(ベタベタ)。これに収録されていない乱歩作品でもっとも好きなのは『パノラマ島奇譚』で、これは二回ほど読んだ記憶がある。子供心ながらにラストシーンがとても美しいと思っていた。

 『踊る一寸法師』はめちゃくちゃ丸尾末広が好きそうだなと思いながら読んだが、実際に『芋虫』で漫画化されているようで読んだはずなのに全く記憶にない。

(2016年 新潮文庫 ★★★★★)