2018-01-01から1年間の記事一覧

タネリ・ムストネン / サマー・ヴェンデッタ

暇つぶしに借りてきて観た。ネットのレビューはかなり酷評に近いものが多いが、そうした評価を下したくなる気持ちはわからないでもない。 二転三転する展開は観客の予想を裏切ってやろうという意図が明らかで(にも関わらずトレイラーの段階でネタバレしてし…

鏡リュウジ / 占星術の文化誌

現代の枠組みにおいて「オカルト」として退けられがちな占星術は、中世以前では一つの学問あるいは教養として科学と分かちがたく結びついていた。文学・美術・音楽・医術・心理学という諸分野において、それがどのような影響を与えてきたのかということにつ…

岩井洋 / 記憶術のススメ 近代日本と立身出世

明治二十年代ごろ、催眠術・心霊術・記憶術を始めとする<術>ブームがあった。それは資本主義が輸入され、日本が急速に近代化していく過程において、人々がより経済的な価値観を重視し、時間を細かく断裁することで効率的な時間配分を獲得しようとする思考…

ジョゼフ・デスアール, アニク・デスアール / 透視術——予言と占いの歴史

奇術の演出論的な興味から読んだ。あとがきによれば著者のジョゼフ・デスアールはそもそもが本業の"透視術師"なので、その実践に基づいたオカルト的な(あるいは超心理学的な)語彙で溢れてはいるものの、透視術(占いも含む)のカテゴリーや実際の事例など…

大塚英志 / 殺生と戦争の民俗学 柳田國男と千葉徳爾

図書館でパラパラとめくりながら「殺生の快楽」という物騒な見出しが目に飛び込んできて、大塚英志にこの手の話を書かせたら面白いに決まってるよなと思いながら手に取った本。 柳田國男の弟子たちの中でも最も「部外者」に近かった千葉徳爾(本書によれば大…

ロベルト・ジョビー / カード・カレッジ・ライター

ロベルト・ジョビーの『カード・カレッジ・ライター』の完訳。こうした本を翻訳、出版してくれる方々は本当に尊いと思う。僕らのようなアマチュア・マジシャンはいくらギャランティやチップを稼いでいようが、結局やっているのは他人の真似事ばかりで、偉そ…

A・A・ミルン / クマのプーさん、プー横町にたった家

先日『プーと大人になった僕』を観に行ったのだが、ミルンの原作もまったく読んだことがないし、ディズニーのアニメすら全く知らなかったので、ウサギやらカンガルーやらフクロウやら未知のキャラクターが登場してきて「なんじゃこりゃ」状態で、それでも面…

マーク・ダグラス / ゾーン 相場心理学入門

僕自身はトレーダーではないし、それに類する投資も全くやらない。もしかするとこの先いつか手を出すこともあるかのかもしれないが、今のところその予定はない。にも関わらずこの本を読んだのは、単純な知的興味からである。 ほとんど知識がなくファンダメン…

セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ / 誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

めちゃくちゃな希死念慮に襲われるたびにGoogleの検索ボックスに「死にたい」と意味もなく打ち込み、検索結果のページを眺めては溜息をつくということを繰り返していたことがあるのだが、ある時期を境にして検索結果に「こころの健康相談統一ダイヤル」なる…

デイヴィド・クレイグ / コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る

僕にはブックオフのビジネス書コーナーという地球上で最も意識の低いであろう場所で本を買いまくる悪癖のようなものがあり、そこでたまたま手に取った一冊。コンサルタントとして華麗なる経歴を持つ筆者が、虚業としてのコンサルタントの内幕や、その手口に…

ランベルト・バーヴァ / ザ・トーチャー 拷問人

僕が大学生くらいの頃にホラー秘宝というキングレコードのホラー映画専門レーベルがあって(まだあるっぽい)、古いカルト映画や低予算ホラー映画を定期的にリリースしていたのだが、その頃に観ようと思いつつ放置した一本。 口から猿轡を吐きだし磔にされた…

ミラン・トドロヴィッチ / ゾーン・オブ・ザ・デッド

もう10年くらい前のゾンビ映画で、大学生くらいの頃に観ようと思ってずっと放置していた。何故かゲオで見かけて急に観ようという気になって借りてきた。 さすがにもう古めの低予算映画なのでテンポが悪く、エンジンがかかるまで30分くらい掛かることは確かな…

高木重朗 / カードマジック事典

マジック愛好家の間ではその名を知らない人はいないくらいの名著で、カードマジックを学ぶならこの本をまず買えとアドバイスされることも多いのだが、ネットで「カードマジック事典 おすすめ」と検索をかけてみても名作以外の有用な情報が出てこないあたり、…

ジョー・チエン / ゾンビ・ファイト・クラブ

いやあ。てんでダメな映画というわけじゃないんですよ。わりとアクションとか戦闘シーンは頑張っているんですよね。女優もみんな美女揃いだし。 狭いマンション内(?)でゾンビをボッコボッコ素手で殴り倒していく(ゾンビこれだけ殴り殺すのは珍しいのでは…

中田考 / みんなちがって、みんなダメ

書店で刺激的なタイトルに惹かれて面白そうだなと思い手に取った本。ところどころで蒙を啓かれる部分も多かったが、読み終えてみてあんまり愉快な本ではなかったことは確か。 たとえば社会そのものに満遍なく西洋近代思想のイデオロギーが浸透しており、それ…

クリストファー・ランドン / ゾンビーワールドへようこそ

ビール飲みながらなんとなく観ていたが、けっこう面白い映画だった。ゾンビ×コメディ×青春(しかも童貞)というあまりにもベタベタで手垢がつきすぎてもう黄ばんでるぜそれ、みたいな内容ではあったが、くだらないジョークの連発でゲラゲラ笑いながら気分よ…

佐々木敦 / 「4分33秒」論——「音楽」とは何か

佐々木敦という方はアカデミズムに対する恋慕とかコンプレックスを隠さず、現代音楽とかコンセプチュアル・アートのような分野を題材にしてツギハギのパッチワークでそれっぽいことを書く腕利きの音楽ライターという印象で、この本も概ねそんなような内容だ…

サリー・ボンジャース / わかっちゃった人たち 悟りについて普通の7人が語ったこと

この種のスピリチュアル本はほとんどの場合、覚者(グル)が覚醒までのプロセスやメソッドを提示する、というのが基本的なパターンなのだが、この本はそうしたいわゆるカリスマ的なグルではなく、むしろグルに指導されている側の、市井の人々が何らかのきっ…

春日太一 / 時代劇はなぜ滅びるのか

図書館で借りて読んだ。申し訳ないがこれはちょっと買わなくてよかった。 時代劇の変遷をデータで分析・考察していく一章、二章は納得しながら面白く読んでいた。視聴者層を高齢者向けに絞り、若年層を切り捨てた結果が現在の時代劇の没落につながっていると…

ふろむだ / 人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている

この著者のことはいっさい知らないのだが、たまたまネットで見かけて面白そうだなと思い買って読んだ。Amazonの入荷予定がけっこう先で、まあ書店に行けばあるだろ、くらいの気軽な気持ちで探しに行ったら驚くほど品薄で、数件ハシゴしてようやく見つけた。 …

NABO(長野県上田市)に行ってきた。

長野県上田市にあるNABOというブックカフェに行ってきた。 僕は一本釣りで読む本を決めることが多く、外で読書をするときはすぐ近場のタリーズコーヒーやスターバックスのような大手コーヒーチェーンで済ませてしまうのでブックカフェというものにはほとんど…

村上春樹 / Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選

むかしから村上春樹が好きでよく読んでいる。多くの読書好きがそうであるように、彼の小説やエッセイなんかをあますところなく読んだ後は、彼が影響を受けたと思しき英米圏の作家を読むようになるのだが、どういうわけだか彼の好きな作家というのは、僕には…

パク・ミンギュ / 亡き王女のためのパヴァーヌ

読んでいる途中で「もしかしてこれ『君が望む永遠』か?」と思い、実際に読み進めてみると半分は当たりだったわけだが、それよりも近いのは『リトルバスターズ!』の方であった。 この喩えが理解できる人はもはや老境に差しかかっているだろう。お陰でとても…

ゆくえしれずつれづれ(Not Secured, Loose Ends) / exFallen

YouTubeがやたらとぜんぶ君のせいだ。をレコメンドしてくるので聴いていたら結構ハマってしまい、現時点での最新アルバム『NEORDER NATION』をよく流しているのだが、その他方でコドモメンタルというレーベル経由で知ったのが彼女たち。 このPVは最新アルバ…

アンヌ・フォンテーヌ / 美しい絵の崩壊

ガス・ヴァン・サントの『追憶の森』はマシュー・マコノヒー演じるアーサーという男が、自殺するために青木ヶ原樹海を訪れるところから始まる物語だが、アーサーの嫁はナオミ・ワッツだと知った瞬間に「おいおいナオミ・ワッツと結婚しておいて自殺だと?」…

ファン・ジョンウン / 野蛮なアリスさん

まだ落ちてて、今も落ちてるんだ。すごく暗くて長い穴の中を落ちながら、アリス少年が思うんだ、ぼくずいぶん前に兎一匹追っかけて穴に落ちたんだけど……どんなに落ちても底に着かないな……ぼく、ただ落ちている……落ちて、落ちて、落ちて……ずっと、ずっと……も…