小説

伴名練 / なめらかな世界と、その敵

書店で装丁を見てたぶん面白いんだろうなと思って買ってみたが、やはり面白かった。こんなこと言いたくないのだがかつて大学の頃に夢中になって読んだ伊藤計劃と読後感がほとんど同じで、なんだかとても懐かしい気持ちになった。具体的に何が似ているのかと…

A・A・ミルン / クマのプーさん、プー横町にたった家

先日『プーと大人になった僕』を観に行ったのだが、ミルンの原作もまったく読んだことがないし、ディズニーのアニメすら全く知らなかったので、ウサギやらカンガルーやらフクロウやら未知のキャラクターが登場してきて「なんじゃこりゃ」状態で、それでも面…

村上春樹 / Carver's Dozen レイモンド・カーヴァー傑作選

むかしから村上春樹が好きでよく読んでいる。多くの読書好きがそうであるように、彼の小説やエッセイなんかをあますところなく読んだ後は、彼が影響を受けたと思しき英米圏の作家を読むようになるのだが、どういうわけだか彼の好きな作家というのは、僕には…

パク・ミンギュ / 亡き王女のためのパヴァーヌ

読んでいる途中で「もしかしてこれ『君が望む永遠』か?」と思い、実際に読み進めてみると半分は当たりだったわけだが、それよりも近いのは『リトルバスターズ!』の方であった。 この喩えが理解できる人はもはや老境に差しかかっているだろう。お陰でとても…

ファン・ジョンウン / 野蛮なアリスさん

まだ落ちてて、今も落ちてるんだ。すごく暗くて長い穴の中を落ちながら、アリス少年が思うんだ、ぼくずいぶん前に兎一匹追っかけて穴に落ちたんだけど……どんなに落ちても底に着かないな……ぼく、ただ落ちている……落ちて、落ちて、落ちて……ずっと、ずっと……も…