ジョゼフ・デスアール, アニク・デスアール / 透視術——予言と占いの歴史

 奇術の演出論的な興味から読んだ。あとがきによれば著者のジョゼフ・デスアールはそもそもが本業の"透視術師"なので、その実践に基づいたオカルト的な(あるいは超心理学的な)語彙で溢れてはいるものの、透視術(占いも含む)のカテゴリーや実際の事例などをまとめた軽い読み物としてはなかなか面白かった。

 現時点での個人的な奇術的関心を述べれば、こうしたシャット・アイの透視術師がどのような思考やロジックを辿っているのかということをトレースすることに興味がある。

 たとえば奇術において「カードを一枚当てる」という現象を演じるとする。その際に「マインド・リーディングによって当てる」という演出をすると考えたとき、それを微表情によって当てるのか、脈拍の動きのなにがしかで当てるのか、透視能力で当てる(だとすればそのカードのイメージが"視える"のか、頭のなかでつぶやく声が"聞こえる")のか、というような演出のカテゴリーがまず先にあり、そのいずれかを実際に自ら"行使できる"ということを自己暗示的に信じ込み、実際に遂行することが奇術そのもののリアリティ、換言すれば"能力の錯誤"を生むことにつながると考えるからだ。いや、奇術というのは微妙かもしれない。これはメンタリズムの話になるのだろう。

 まあともかく、そうしたことをふと考えるときに読む本としてはなかなか悪くなかった。そもそも透視術とは何か、という問いに始まり、代表的な透視術の種類について、透視術といかさまとの関わりについてなど、広く浅く触れられている。150頁ほどの新書なので情報量としてはそれほど多くないのだが、読みながらいろいろと思うところはあった。

  自分の「サイ」能力を調べてみたい人のためには、ラインが考案した普通の五二枚一組のトランプによって行う検査をお薦めする。この方法は、まず最初に四枚のエースを抜き出し、表を向けて並べて場のカードとする。それから残りの四八枚のカードを切り、裏を向けたままで四種類の絵柄に分けて、四枚のエースカードの該当する絵柄の上にそれぞれ積み重ねていく、というものである。大切なことは、配っていくカードではなく、絵柄が見えている四枚のエースカードのほうに注意を集中させる事である。一回の実験で偶然に成功する平均確率は一二枚である。(P.115-116)

 奇術的に解決できるんじゃないかなと思ったりもしたのだが、実際に演技しているところを想像してみるとなんだか冗長になりそうな気もする一方で、実際に演じたら強烈は強烈であるような気もするし、不気味の谷をあっさり超えてしまい「どうせ仕掛けがあるんでしょ」と言われてしまうような気もする。とりあえず引用だけしておくことにする。

(2003年 白水社 ★★★☆☆)